vol.1 当塾開校の理由 その1
- 三吉
- 3月10日
- 読了時間: 4分
更新日:3月13日
こんにちは。代表の三吉です。
私が不登校児向けの学習塾を開校した理由について、2回に分けて、お話ししたいと思います。
今回は、なぜ私が未経験である業界で独立しようと考えたかについてです。

私は10年以上、建設・不動産業界で仕事をしてきました。
建設・不動産業界の魅力としてよく挙げられるのは、何と言っても「大きなものを作り上げる」ことです。
数十年にもわたって残る建物や施設を手掛け、大きな金額が動く事業であるため、誰もがやりがいを感じる瞬間があるのではないでしょうか。
確かに、それらの要素は魅力的であり、私も最初はそのような魅力に引かれて、日々の仕事に取り組んでいました。
しかし、年月が経つにつれ、私は次第に「やりがい」に対する考え方が変わってきたことに気づきました。
大きなプロジェクトが完成したときに感じる達成感や、目に見える形で成果を残すことに喜びを感じる瞬間も確かにありました。
でも、それ以上に私が嬉しかったのは、「関わってくれた人たちが喜ぶ姿を見ること」でした。
建設業や不動産業界では、どうしても「利益」を優先せざるを得ない場面が多くあります。
もちろん、企業として利益を追求するのは当然のことです。
しかし、その過程で関わる人々や地域社会にとって本当に良いものを提供できているのか、疑問に感じることが増えてきました。
例えば、コスト削減や納期の都合で、無理を押し通さなければならない場合、関係者全員が満足する結果を得ることは難しいのではないか、と感じるようになったのです。
利益を追求しながらも、関係者が満足できる結果を生み出すことの難しさを感じながら、次第に「自分が本当にやりがいを感じるのは、関わった人々が喜んでくれることなんだ」ということに気づきました。
それが、私が独立しようと思った一番の理由です。

「すべての関係者が喜んでくれる仕事」について考えたときに、大学生のころのアルバイトの経験を思い出しました。
個別指導塾で中学から高校生を教えていたのですが、その時こそ、人に寄り添い、彼らが「できた!」と感じる喜びを共有できていたように思えたのです。
個別指導塾では、ひとりひとり異なる理解度やペースで進む生徒たちに対して同じような授業をしても、なかなか結果には結び付きません。
一人ひとりの特性をしっかりと把握して、それぞれの理解度や学び方に合わせたアプローチを取ることが求められました。
例えば、ある生徒には抽象的な概念を視覚化するアプローチが有効で、文字だけでなく図やグラフを使った説明をすると、非常に理解が早く進みました。
数学の問題でグラフや線分図を使って説明することはもちろん、国語の読解においても、出てくる要素の関係性を図解化することで、問題の構造を視覚的に捉える方法を教えました。
別の生徒は、暗記を苦手に感じていました。
そこで、最低限覚えておくべき内容をまとめてそれを小分けにし、一日少しずつの暗記とテストを何度も繰り返しました。
これは「分散学習」と呼ばれる方法で、記憶を長期的に定着させるのに役立ちます。
テストについても、最初は思い出しやすいようなヒントを交えたものから始め、徐々に難易度を上げていくなど、状況に合わせて変えていきました。
一方、別の生徒は積分の概念がなかなか理解できませんでした。
積分は「面積を求める」数学的な方法ですが、それを「車の移動距離」などの、生徒にとって身近な例を使うことで実感を伴って理解してもらうことができました。
誰にでも同じ方法が通用するわけではないので、一人ひとりに真剣に寄り添い、考え抜く必要がありました。
しかし、生徒の目が輝き、「分かった!」という瞬間に立ち会うことは、何よりのやりがいでした。
もしかしたら、このときの経験が、私が人に喜んでもらうことの楽しさに気づかせてくれたのかもしれません。
時には生徒が自信をなくしている瞬間に寄り添い、励ましながら一歩ずつ前進していく。
単に知識を伝えるだけではなく、人に寄り添いながら一緒に成長できることに大きなやりがいを感じています。

長くなってしまったので、手短にまとめます。
建設・不動産業界での仕事を通じて、もっと「人」に寄り添った形で仕事をしたいという思いが強くなり、私は独立を決意しました。
利益を追求する中で関わる人々が本当に満足する結果を生むのが難しいという現実を感じる一方で、人と人が直接関わり合うことで、喜びを分かち合えるような仕事に携わりたかったのです。
そこで思い出したのが学生時代の個別指導塾のアルバイト経験でした。
教育という分野には、人々と深く関わり、人に寄り添い、ともに成長することができる魅力があります。
私が学んだ「一人ひとりに合ったアプローチ」を大切にしながら、一人でも多くの子どもたちにとって居心地の良い場所を提供できるような塾にしていきたいと思っています。
次回は、私自身の経験から、「不登校児のための居場所」を作ろうと思った経緯についてお話しさせていただきます。
ぜひお読みいただけますと幸いです。

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